90-1 全面撤退
"817”:” 立花真人の方で何か問題が起きたみたい。確認しに行ってもらえる?",
私がヘリポートを離れて立花を探しに行こうとすると深見が私を待っていた。
深見翔央「来たか・・・加山は・・・いや、何でもない」
深見は私の表情を見て、気持ちを酌んでくれたのかこれ以上何も言わなかった。
波間七海「・・・・・・ありがと・・・」
私はかすかに聞こえるか聞こえないかの声で返事をした。
深見翔央「これからどうするんだ? 地下通路へ向かうのか?」
深見は話題を変えた。
波間七海「・・・・・・さっき、桜井にあったの・・・」
深見翔央「桜井に?」
波間七海「えぇ・・・立花さんを探しに行くって言っていたわ・・・」
深見翔央「・・・そうか、彼女はまだ・・・」
波間七海「私も・・・立花さんを探そうと思う・・・」
深見翔央「そうか、俺も行こう」
深見は私の心情を察したのかムリに地下通路へ行くことを進めてこなかった。
深見翔央「遠回りでも構わない・・・立ち止まらず、前に進むのであれば・・・」
波間七海「えっ・・・?」
深見翔央「いや、何でもない。行こう」
私達は立花が戦ってるであろうポイントへ向かった。”,
"818”:”
立花真人「貴方達! まだこんな所で油を売っているのか!? 菊池から連絡があった。他の生存者は全員地下通路へ避難したぞ!」
立花真人「早く貴方達も行け! 部下も全員退避させた。ここは私が受け持つ!」
波間七海「・・・立花さん一人を残すなんてできるわけないでしょう」
この拠点を一人で防衛するなんて素人の私でも無謀なのはわかっていた。
立花真人「ふっ、私も甘く見られたものだ」
立花さんの目つきが鋭くなる。
立花真人「この私があの程度の敵を押しとどめられないとでも思っているのか?」
立花の語気が強くなる。
波間七海「違う・・・違うわ」
(立花さんの実力は疑う余地なんてない。でも・・・)
立花真人「ならば、早く撤退しろ。これは命令だ」
立花は伝え終わるとくるりと背を向けた。
波間七海「ま、待って! 話があるの!」
立花が離れようとしているのを見て、慌てて彼女を止めた。
立花真人「敵が来る。無駄口を叩くのは後だ!」
(桜井の言った通り・・・立花さんはここを離れる気がないんだ。この街と一緒に死ぬつもりなんだわ)
(何とか彼女を止めなくちゃ!)”,
それが立花の決めたことだったら、私たちがどうこうすることはできないんじゃないかしら。",
90-2 抵抗反撃
"819”:” 立花を説得したいのなら行くといいわ。でも、あなたが説得出来るかしら?",
(桜井の事を立花さんに話せばきっと・・・!)
波間七海「立花さん・・・実はさっき桜井に合ったの」
波間七海「彼女はあなたを探してる・・・あなたの殺すために。立花さんなら彼女に勝つことは難しくないと思う。でも・・・あなたは彼女との戦いなんて望んでいないでしょう?」
立花真人「・・・・・・私は行くつもりはないし、行くこともできない・・・」
立花はしばらく黙っていてから言った。
私はそこでようやく気が付いた。立花の笑顔が不自然であることを、その表情から血の気が引いて顔色が白くなっていることを。
彼女は小刻みに震え、手で押さえている腹部からは血が滲んていた。しかもその範囲は徐々に広がっている。
波間七海「なっ! 怪我!? いつ怪我したの!? なんで治療してないの!」
私は思わず大きな声を出した。
立花真人「医療品は貴重だ。私のために消費する必要はない」
立花はかるく頭を振った。平静を装ってはいるが、あの傷、相当辛いはずだ。
立花真人「ぐっ・・・!」
立花は耐え切れず、お腹を押えたままその場に倒れた。
波間七海「こ、こんなにいっぱい血が流れて、ど、どうしよう? 深見・・・深見なら・・・治療できる!」
私はあたりを見渡して深見を探した。まだ戦闘しているのか近くには見当たらなかった。
波間七海「深見! 深見ぃ!」
私は大声を出して深見を呼んでみたが返事はなかった。渚輪大橋に吹いている風がますます冷たく感じるのであった。”,
"820”:”
波間七海「くっ・・・血が・・・止まらない! どうして!」
私は立花の傷を強く押さえたが、傷口からは血が染み出してくる。
波間七海「このままじゃ、桜井が来てしまう・・・」
私は小さな声でつぶやいた。圧倒的物量を誇る政府軍、それに加えて桜井まで・・・。状況はひっ迫していた。
立花真人「ふっ・・・ここまでか・・・。待っていたんだがな・・・」
立花の瞳は遠くを見つめ、とても小さな声で言った。
波間七海「えっ?」
立花真人「どんな人間でも・・・死ぬ間際に会いたい人は必ずいるものさ」
(このままじゃ・・・立花さんは・・・。また私は見てることしかできないの・・・?)
深見翔央「呼んだか?」
私が俯いて絶望していると、煙の中から深見が現れた。体中傷だらけで、厳しい状況から急いで戻ってきてくれた事が伺えた。
波間七海「深見! 立花さんが重傷なの!」
深見翔央「わかった。だがまた敵が来る。立花を安全なところに寝かすんだ。先に敵を片付けよう」”,
立花は真面目で頑固な人よ。あなたが彼女を説得することができないなら、他に説得できる人はいるかしら?",
90-3 前線支援
"821”:” 立花を説得できるのは、この世の中でたった1人だけ。でも、あなたではないわ。それでも行くの?",
ゾンビを掃討した私は立花の様子が気になり駆け寄った。
立花真人「軍は・・・撤退したが、ゾンビがうろついている・・・早く撤退しろ・・・」
立花真人「貴方達の撤退が完了すれば・・・私の任務も完了する・・・」
立花の声からは力が感じられなかった。血を流しすぎているのか顔は真っ白だった。
波間七海「立花さん・・・どうしてそこまで・・・」
立花真人「フフッ・・・みんなの幸せを・・・守れる人間になるために・・・軍人になったのに・・・」
波間七海「立花さん・・・」
立花真人「それなのに・・・私は・・・大事な人を、一人とて守ることができなかった・・・」
(あの冷徹な立花さんが本心ではこんなに温かい心を持っていたなんて・・・)
波間七海「本当にここに残るの?」
立花真人「私に構うな・・・ここが私の最後の戦場だ・・・」
波間七海「・・・・・・
波間七海「まだなの・・・はやくきて・・・!」
(桜井は何しているの・・・! このままじゃ立花さんが・・・!)
あれほど桜井を立花に会わせまいとしていた自分が今では一秒でもはやく立花に会わせてあげたいと思っていた。自分の無力さに私はまた涙がこみ上げてきた。”,
"822”:”
深見翔央「待たせてすまない! 傷を見せろ!」
敵を倒した深見がようやく戻ってきた。彼は立花の側に近づくとしゃがんで彼女に話しかけた。
立花真人「す、すまないな・・・」
立花は自身の腰に巻かれている包帯をほどいて、深見に怪我を見せた。脇腹に大きな穴が開いており、大量の血が流れ出ていた。深見はその傷の具合をみて目をしかめた。
深見翔央「この出血量・・・駄目だ。彼女は助からない」
深見はその場にすっと立ち上がって、私に厳しい現実を突きつけるように言った。
波間七海「なっ?! ほ、本当にどうすることもできないの?」
深見翔央「すぐに輸血を受けさせないといけないが、ここにある設備だけでは無理だ」
深見は冷たく言い放った。人命にかかわる事でも関係ないというように、深見は事実を淡々と述べた。
立花真人「気にかけてくれるのは嬉しいが・・・自分の体だ・・・自分の状態は自分が一番わかっているさ・・・」
傷ついた体に鞭をうって立花は立ち上がった。
波間七海「立花さん! 無理しないで!」
立花真人「綺麗な夕焼けだな・・・今まで夕焼けなんて・・・気にも留めていなかった・・・」
深見翔央「敵を倒しに行こう・・・」
波間七海「深見?」
深見翔央「彼女を助ける事はできないが、静かに逝かせてあげることはできる・・・」”,
まさか立花の怪我がそんなに酷かったなんて・・・全然見抜けなかったわ。",
91-1 医療補給を待つ
"823”:” 立花をどうか守ってあげて。最後まで・・・。",
立花真人「うぐっ・・・!」
立花は限界が近いのか、立っている事も出来なくなっていた。
波間七海「立花さん!」
私は急いで近寄って彼女を支えた。
立花真人「大丈夫だ・・・」
立花真人「すまないが・・・頼みたい事がある。玲奈にあったら・・・彼女のことをよろしく頼む・・・」
立花真人「軍校に入ってから・・・ずっと一緒だった・・・。お互いに支えあってきた・・・。あの子は私の半身・・・」
立花真人「こんな事さえ起きなければ・・・離れる事はなかった・・・」
立花の台詞を聞いて深見の表情が一瞬曇った。
立花真人「でも・・・そんなことは小さなことだ・・・。私は大局のために彼女を捨てた・・・。そのことに比べたら・・・」
立花はそういうと俯いた。
立花真人「最後に・・・玲奈に会いたかった・・・」
波間七海「立花・・・さん・・・」
立花真人「私の代わりにあの子を・・・玲奈を守ってほしい」
波間七海「・・・わかった。約束するわ! 何が何でも私が守って見せる・・・!」
私は強くうなずいた。その願いが立花の遺言だと分かっていたから。”,
"824”:”
立花はその場に静かに地面に座り込んだ。今の彼女にとっては、立つことでさえ体力を消耗する。
渚輪区にいる生存者を守るために、彼女は持てる全ての力を尽くした。そして今、最後の時を迎えようとしていた。
太陽がだんだん西に沈んでいる中、彼女の命の火も少しずつ小さくなっていくのがわかった。
立花にありがとうと言いたいけど、喉が詰まり、一言も言い出せないでいた。
そんな中、深見が沈黙を破り、身を起こした。
深見翔央「彼女を少し休ませよう。どこかに医薬品が残っていないか探してみる」
波間七海「! わ、わかった! 安全な場所で立花さんを休ませたら私も探しに行くわ!」
深見はまだ諦めてないのだと思い、思わず嬉しくなった。立花さんに諦めない様に声をかけつつ安静な場所に横に寝かせた後、医療品を探しに走った。”,
早く残りの鳳凰軍校生を連れて撤退しましょう!",
91-2 政府軍の反撃
"825”:” 立花の様子はどう?・・・たとえどんなに酷い怪我を負っていても、彼女は最後まで戦うのでしょうね・・・",
周囲を探したが医療品は見当たらなかった。立花の事が心配になり一旦立花の元に戻った。
波間七海「立花さん、大丈夫・・・?」
立花は私の声を聞くと小さくうなずいた。
深見翔央「残っていた医薬品があったぞ! とりあえず傷を消毒して、出血を止めよう!」
深見翔央「さぁ、これを飲むんだ。少しは楽になるはずだ」
立花真人「ありがとう・・・」
立花は苦しそうにしながらも頑張って薬を飲んだ。
波間七海「こ、これで立花さんは助かるのよね!?」
私は深見を軽く引っ張って、立花さんに聞こえない様に聞いた。
深見翔央「残念だが、これは延命措置だ。」
波間七海「・・・・・・」
深見翔央「鎮痛剤を飲ませた、せめて苦しまず逝けるように。これが今できる最良の手だ」
深見からは全く感情が感じ取れなかった。残忍な人間なのか心優しい人間なのか全くわからなくなる。
波間七海「こんなの・・・こんなことってある!? 彼女は私達のために・・・私達を守るために一生懸命戦ったのに・・・! こんなの不公平よ!」
私は声を荒げた。
深見翔央「この世界に・・・公平、平等なんていうのはない。少なくとも俺は知らない」
深見は治療を終えるとスッと立ち上がると橋の先をじっとみつめた。まるで誰かを待っているかのように。”,
"826”:”
深見翔央「・・・来た」
波間七海「えっ?」
深見が見詰めてる先をじっと見つめてみると人影が近づいてくるのが見えた。
桜井玲奈「・・・見つけたわ」
人影は桜井だった。桜井が私達の前に現れた。
波間七海「桜井・・・! 間に合った!」
桜井と出会ってこれほど弾んだ声で彼女に話しかけたことがあっただろうか。それほどまにで私は彼女が間に合ったことがうれしかった。
桜井玲奈「ほとんどの人間がもう逃げたみたいね。すんなりここまで来られたわ」
波間七海「私達の作戦は成功したわ。あなたも一緒に―」
桜井玲奈「あなたに用はないわ。私が用があるのは真人・・・あなた一人よ」
桜井は私の言葉を遮り立花に近づいたが、立花は既に立つ気力もなかった。
波間七海「彼女に何をするつもり?」
桜井が立花に手を出さないか心配で、慌てて二人の間に入った。
桜井玲奈「邪魔しないでくれる? あんたみたいな雑魚に用はないって言ったでしょ!」
桜井はそう言うと鼻でふんっと笑った。”,
少ない戦力じゃ政府軍を抑えるのも限界があるわ!早く撤退を!",
91-3 桜井玲奈
"827”:” 桜井玲奈と戦っているのね。立花真人の雄姿を見守ってあげて。",
桜井玲奈「そこをどいて。私は真人と決着をつけに来たの。今日ここでそいつを倒してね!」
波間七海「待って! 立花さんはもう―」
立花真人「いいわ。決着つけましょう。」
立花はいつの間にか立ち上がり、私の話を遮った。口調は穏やかで大けがを負っているとは思えなかった。
立花真人「銃だと味気ないわね。いつものようにナイフで勝負しましょうか。」
立花は穏やかに笑うとスッとコンバットナイフを取り出した。
桜井玲奈「何? その顔、余裕のつもり!? ナイフで構わないわ!」
立花がナイフを取り出したのを見て桜井もナイフを取り出し臨戦態勢を取った。
波間七海「立花さん!」
私は立花を止めようと踏み出そうとしたが、立花は私に頭を振って、私を止めた。
(今の立花にナイフで戦う体力なんてない・・・止めないと!)
私は急いで二人を止めようとしたが、深見に止められた。
深見翔央「彼女の好きにさせてやれ。これが彼女の最後の願いだ」
私達が話している間に、二人はすでに戦闘を開始していた。彼女の脇腹の傷口から血が染み出し血痕が広がっているが私には見ている事しかできなかった。”,
"828”:”
桜井玲奈「隊から追放された恨み、ここで晴らしてやる!」
激しい戦いの中でも桜井は立花を怒鳴り続けている。
立花真人「私が悪かった。本当にごめんなさい」
桜井玲奈「ごめんなさいぃ? 謝れば許してもらえるとでも!? 許すわけないでしょ!」
立花真人「えぇ・・・そうね。謝って許してもらえるとは思っていない」
立花と桜井は互いに攻撃を繰り出しては回避を繰り返しその実力は拮抗していた。
波間七海「立花さんは・・・確かにあなたを見放した。でも、それは仕方なかったの! クローンの存在が皆に知れたら作戦どころじゃなくなっていたわ!」
私は思わず立花のために弁解した。
桜井玲奈「さっきからピーチクパーチク五月蠅いんだよ! あんたに何の関係があるの? しゃしゃり出てくるな!」
桜井は叫んだ後、私を睨んだ。その瞬間、叫びに呼応したかのように黒い影が飛び出してきた。
深見翔央「危ない!」
深見がいち早く気づき黒い影と対峙した。”,
"829”:
キィィーーーン
桜井玲奈「・・・勝った! やった!」
化物を退治し終えた所で金属がぶつかる音と桜井の歓声が耳に入った。振り向くと、桜井が地面に座り込んでいる立花にナイフの刃を向けて突き出していた。
桜井玲奈「私の勝ちね! 負けたんだから私の言う事を聞いてもらうわ。軍に入って私の部下になりなさい。それが私を裏切ったあなたの代償よ!」
桜井はふんっと鼻を鳴らすと冷たく言い放った。
しかし立花はへたり込んだまま、頭を下げ微動だにしなかった。
桜井玲奈「負けたのがそんなに悔しいの!? 聞こえないふりにしないでよ! 不愉快だわ!」
桜井はイラ立ち声を荒げた。それでも立花は全く反応を示さなかった。
波間七海「!・・・た、立花さん!!」
私達は立花の異変に気づき駆け寄ろうとした。立花はふっと倒れ、それからピクリとも動かなくなった。
深見が近づいて彼女の首に触れ、私に向かって顔を横に振った。
深見翔央「彼女は逝ったよ」
桜井玲奈「はぁ? 何わけわかんないこと言ってんのよ!」
桜井は深見の言ったことが理解できず怒鳴った。
深見翔央「『死んだ』と言ったんだ!」
深見は強い言葉で桜井に言った。
桜井玲奈「はぁっ!? な、何で、何・・・? 何言ってるの・・・!」
深見の言葉の意味をようやく理解したのか桜井の顔が見る見る青ざめていった。”,
そう・・・立花真人が・・・分かったわ・・・",
92-1 浄化槽を通り抜ける
"830”:鳳凰軍校の人たちを連れて渚輪大橋から撤退して。いつ何が起きるか分からないから気をつけてね。",
波間七海「うぅ、桜井・・・ぐすっ、あんたの願い・・・叶ったわよ。立花さんは死んだ・・・死んだんだよ!」
私はむせび泣きながら言った。
桜井玲奈「な、何で・・・どうして!? なんで真人が死ぬのよ! わ、私は真人を傷つけるつもりなんて・・・な、なのにどうして!?」
桜井は顔を真っ青にして私に言った。動揺して焦点が合っていない様子だ。
波間七海「立花さんはあなたと戦う前から酷い怪我をしてた・・・本当に死にもの狂いて戦ったの。みんなを守るために・・・。あなたが言った通りよ。彼女は自分を犠牲にすることでその代償を払ったのよ」
桜井玲奈「真人が・・・? なんで・・・私はただ真人と安全なところに・・・一緒に行こうと・・・真人・・・」
ショックが大きすぎたのか桜井はうわ言のように呟いている。
桜井が立花を抱き上げ、彼女の腕に触り脈を測るが、二度と鼓動をうつことはなく、その体も冷え切っていた。
桜井玲奈「なんで・・・どうして! 真人! 私はあなたを連れ戻しに来たのに! 起きてよ! 目を開けてよぉ!」
桜井が大きな声で叫んでた。
波間七海「・・・・・・桜井のせいじゃないわ。立花さんはあなたと戦う前から瀕死だった・・・気力だけで戦っていたの・・・」
桜井の悲痛な様子を見かねて、彼女を慰めた。
桜井玲奈「全部・・・全部全部全部!! お前達のせいだ! お前達みたいな足手まといを守らなかったら、真人も死なずに済んだ!」
桜井はそう叫ぶと立花の体を抱きながら大きな声で泣いた。
桜井玲奈「こんなはずじゃ・・・こんなはずじゃなかった・・・真人・・・こんなはずじゃ・・・」
桜井は一頻り泣くと茫然自失になり、同じ言葉を繰り返した。”,
"831”:”
私は桜井の様子が心配でしばらく見守っていた。すると桜井がチラリとこちらを見た。
桜井玲奈「もう残り時間がないわよ・・・早く行きなさいよ・・・」
桜井は力なく言うと、立花の遺体を綺麗に寝かして自身もその隣で横になり立花の手とつないだ。
波間七海「桜井・・・一緒に行きましょう・・・」
立花との約束を守るために私は声をかけた。
桜井玲奈「私は行かない。もう、真人の側を離れない・・・」
桜井は立花の頭を抱きしめて、静かに涙を流した。
波間七海「桜井・・・」
桜井玲奈「私達はずっと一緒。私は真人から離れない。真人も私を見捨てたりなんてしない。ずっと・・・命を尽きるまでずっと・・・」
(立花に見捨てられて・・・こんなにも桜井は傷ついていたのか・・・)
桜井玲奈「もう、これでずっと一緒にいられる・・・もう離れ離れになる事もない・・・」
そう言うと桜井は少し笑顔を見せた。
桜井玲奈「クローンだって構わない・・・。私はあなたの側にいられたら・・・それで十分だから」
桜井玲奈「それが・・・私がここに存在している意味なんだ・・・」”,
"地下道なんだから臭いのも仕方がないわ。みんな、我慢して進んでね。",
92-2 重ねる難関
"832”:船の数が足りないかも・・・あ、今のは気にしないで。前へ進み続けて!",
まもなく日が落ちる。夕暮れの中、桜井はやはり立花を抱きしめたまま、動こうとしなかった。
深見翔央「もう、行こう」
桜井の様子を見て深見が私に声をかけた。
波間七海「で、でも・・・立花さんと約束したの。彼女のことを守るって・・・」
深見翔央「彼女は立花の側にいる事が幸せなんだ。君もそれはわかっているだろう?」
波間七海「・・・」
私は桜井をちらりと見た。桜井は動かなくなった立花にずっと語りかけている。
波間七海「・・・わかったわ。行きましょう」
私は桜井の様子を見て、頷いた。”,
"833”:
深見翔央「見てみろ」
暫く歩くと、深見が私の肩を軽く叩いた。振り返り空をみた。
渚輪大橋が夕日の光によって地面は血のように赤く染まり、柱は金色に輝いていた。まるでここで散っていった人達から解放された魂を天へ導こうとしているかのように思えた。
波間七海「綺麗・・・」
私はとても小さな声で呟いた。そして頬を一筋の涙が伝った。
(ここで見る最後の夕日になるのかな・・・みんな・・・)
すると、遠くから拳銃の音が響き渡った。それは静寂の中、際立って聞こえた。
波間七海「! 桜井・・・? そんな!」
私は思わず引き返そうとした。すると深見が私の肩を掴み首を振った。
深見翔央「行こう。時間がない・・・まだまだ歩かないといけないしな」
深見はそう言うと再び歩き始めた。
波間七海「・・・・・・」”,
"生き残った少女が想定より多いのは・・・いいことよね。",
92-3 船が足りない
"834”:"乗船上限人数よりも生存者が多い・・・どうしよう・・・もう手を考えている時間がないわ・・・",
私達は渚輪大橋を離れ、立花から聞いていた地下通路に続く入口を発見した。入口には光が待ってくれていたが何やら様子がおかしかった。
菊地光「どうして・・・計算は合っていた・・・足りないなんて・・・みんな乗せる?・・・でも・・・危険すぎる・・・」
光はぶつぶつと何か言いながらその場を行ったり来たりしていた。
波間七海「光、何してるの?」
菊地光「あ! いや、何でもないわ・・・それより無事でよかった! さぁ行きましょう! 敵に見つからない様に注意して!」
私達は地下通路に降りてしばらく道なりに進んでいると不意に光が声をかけてきた。
菊地光「そういえば・・・立花さんを見かけなかった? あなた達が来る前に連絡が来て、ここに来ないって言ってたんだけど・・・」
私は立花の名前を聞いてびくっとした。
波間七海「え、ええと・・・私ちょっと後ろにいる敵を倒してくるね!」
(ごめんなさい。光、今は・・・その話はしたくないの・・・)”,
"835”:
敵を倒し地下通路を進んでいたが光は私達の少し後ろを歩いていた。何か考え込んでいるようだ。
波間七海「光、どうしたの? さっきから様子が変よ」
菊地光「そ、それが・・・避難用に用意した船なんだけど、乗船上限人数が思ったよりも少なくて全員乗せることができないの・・・」
菊地光「だらか・・・私はここに残るわ。それで一人多く助かる」
波間七海「な、何言ってるの!? はい、わかったなんて言える訳ないでしょ!」
菊地光「これは私の責任よ。偉そうにリーダー気取ってたんだもの。責任はちゃんととらないと」
波間七海「私達は大事な人を失いすぎた・・・もうそんなのこりごりよ!」
菊地光「でも・・・じゃあいったいどうすれば・・・」
私達はその場に立ち止り考え込んでしまった。すると聞き覚えある声が聞こえてきた。
小早川真希「何しょうもない事で絶望してんのよ。足りないなら見つければいいじゃない! あたしが見つけてきてあげるわ」
声に驚き後ろを振り向くと小早川が仁王立ちしていた。
波間七海「小早川?! どうしてここに!」
小早川真希「今は無駄話してる場合じゃないでしょ? 船はあたしに任せて先に進みな!」”,
"もしかしたら本当に船を見つけらるかもしれない・・・探してみましょ!",
93-1 小早川を信じる
"836”:"小早川は一体何を考えているのかしら・・・?",
地下通路を進んでいるとぽつりと光が言葉を零した。
菊地光「こんな時・・・立花さんがいれば・・・冷静な彼女ならこんな時でも迅速に対応してくれるのに・・・」
光の言葉を耳にした周囲は深い沈黙に包まれた。
(この異変で私たちはあまりに多くの人を失った。みんな死んでいった人達の顔を思い浮かべる事すら怖いんだ・・・。私も怜の事が・・・)
(あの子は・・・怜は・・・あの橋で一人ぼっちで埋葬されることもなく・・・)
怜の事を思うと思わず涙が出た。
深見翔央「敵が来たぞ! この場所がバレている! 追いかけてくるぞ!」
深見の声で、静寂が打ち破られた。
波間七海「深見! みんなを連れて先に行って! ここは私が食い止める!」
深見翔央「わかった! 無茶はするなよ!」
そう言うと私は深見達と別れ敵に前に立ちふさがった。今の私には、戦う事が唯一悲しみを忘れられる瞬間なのだ。”,
"837”:
敵を撃退後、私は足早に光達を追いかけ、道なりに進んだ先で光達と合流することができた。
私は再び光達と目的地に向かって歩き始めた。
菊地光「そういえば・・・立花さんは死ぬ前に、何か言い残していたことはなかった?」
光が何かを思い出したかのように訪ねてきた。
波間七海「え・・・? いや・・・その・・・」
私は彼女に桜井を任された事、その桜井を見捨てた事を思い出し口ごもってしまった。
深見翔央「彼女は・・・みんなを守る事が出来た。もうやり残したことはない。本望だと言っていた。」
深見が私の代わりに答えてくれた。
菊地光「そう・・・よかった・・・以前彼女が・・・鳳凰軍事学校の姉妹校にいるライバルともう一度戦いたいって言っていたけれど・・・その願いは叶わなかったから」
菊地光「軍校生がみんなを守るために、この街で戦って犠牲になったこと・・・絶対にみんなに伝えないとね・・・!」
光の瞳に力強さが戻っていた。彼女の言葉には決意が宿っていた。
菊地光「絶対に生きてここから出ないと!」
波間七海「ええ!」”,
"小早川が本心で私たちに協力してくれるならとてもありがたいんだけど・・・正直あんまり期待できないわね。",
93-2 生と死の選択
"838”:”"鳴海遥はずっとあなたと行動していたのよね?・・・彼女には本当に悪いことをしたわ・・・",
私達は地下通路を進み続けていた。
菊地光「小早川はどうするつもりなのかしら・・・? 彼女から何か聞いていない?」
波間七海「いや、わからないわ」
菊地光「今は彼女を信じるしかない・・・か。先に進みましょう。」
再び歩き出そうとした時、背後から足音が聞こえてきた。どうやらこちらに近づいているようだ。
深見翔央「敵か・・・」
菊地光「本当にしつこい奴らね・・・」
私は武器を手にして光達に言った。
波間七海「私に任せて先に行って」
菊地光「気を付けてね。無理だけはしないで!」”,
"839”:
戦いを終えてしばらくすると小早川が私達の前に現れた。
小早川真希「あんた達、まだこんな所をぶらついていたの?」
波間七海「小早川! ちょうどよかった、さっきの話、船を探してきてくれるって本当なの?」
小早川真希「本当だってば! 信じる気がないのならもうほっとくわよ!」
小早川はオーバーアクション気味に私たちから離れようとした。
波間七海「ちょ、ちょっと待ってってば! 信用してないわけじゃなくて、ただ・・・あなたが私達を助ける理由がわからないから・・・」
小早川真希「あんた達の為じゃないわ。遥の為よ。見つけてこないとあんた達が遥を見殺しにするかもしれないでしょ」
波間七海「そ、そんなことするわけ・・・」
(ああ・・・私達は一度遥ちゃんを見捨ててるんだ・・・。)
小早川真希「ふん! 反論できないでしょ? あんた達は自分達の事を正義の味方だと思ってるんだろうけど、結局私たちと同類なんだよ」
波間七海「・・・・・・」
小早川真希「これ以上、無駄話してる暇はないわ。私はあとで追いつくから、それまで大人しく待ってなさい!」
そう言うと小早川は私達と別れ姿を消した。”,
"今まで、私は死に直面した多くの人達を見捨ててきた。私の両手は血に染まっているのよ。",
93-3 犠牲になるか否か
"840”:"船が足りないなら、私が一番犠牲になるべき人だと思う。だって私は・・・",
鳴海遥「・・・・・・」
遥は小早川が向かった方向をじっと見つめていた。
波間七海「遥ちゃん、どうしたの?」
鳴海遥「真希お姉ちゃん・・・戻ってこないかな・・・? やっぱり・・・一緒に行きたいな・・・」
波間七海「今行っても彼女の邪魔になるだけだわ・・・」
波間七海「どれだけ親しい人でも、その人を束縛することはできないの。彼女が今行っていることが彼女の意思、それは尊重してあげましょう」
鳴海遥「・・・・・・」
私の言葉を聞いて遥は悲しそうな表情をした。
波間七海「大丈夫、きっとすぐに戻ってくるわ」
そういって遥をなだめてると風間がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
波間七海「風間さん!? どうしたの?」
風間雅「敵が来てるの! みんなで迎撃してるけど、どれだけもつかわからない! 急いできて!」
波間七海「わかった! 急ぎましょう!」”,
"851”:”
道中、風間が何度かこちらをチラチラ見ている事に気が付いた。
波間七海「風間さん、あなたらしくない。言いたいことがあったら言ったら?」
私の言葉に一瞬びくっと反応した風間だったが、私の言葉で決意したのか質問を投げかけてきた。
風間雅「あなた・・・まだ加山怜の事、気にしてるの?」
波間七海「・・・気にしないわけないでしょ。怜は子供の頃からずっと一緒だった私の一番大切な親友なのよ・・・」
風間雅「そうね・・・今回の異変で多くの人が亡くなったわ。みんな大切な人を亡くした・・・それでも毎日終わりの見えない戦いを続けているのはただただ生き延びたいから・・・」
風間雅「私の心はもう麻痺してるみたい・・・最近ね。何も感じないの」
風間雅「あなたが羨ましい。あなたにはまだ人を思いやる感情が残ってる。私は・・・もう欠片程の感情も残ってない気がするの・・・」
風間雅「もし・・・この街から出れても、もう普通の生活なんて・・・無理ね・・・」
風間の冷静な表情を見て、私は一言も言い返せないでいた。
風間雅「ね。絶対無理でしょ? だったら・・・どこにいようが同じじゃない?」
波間七海「風間さん・・・・・・」
沈黙が続いた。その沈黙をかき消すように雄叫びが通路に響いた。
風間雅「敵がまた来るみたいね・・・行きなさい! ここは私が食い止める。私は全てを失った。もう失うものなんてないわ!」
そう言うとくるりと身をひるがえして武器を構えた。
風間雅「何をしているの・・・先に行けって言ったでしょ」
波間七海「あなたは全て失ってなんかいない、だから一緒に行くのよ!」”,
"この環境にいつまでもいたら、私まで自爆自棄になりそうだわ。",
94-1 船を探す
"852”:"私が謝らなきゃいけない人はたくさん居る。鳴海遥もその一人よ。全てがまだ間に合えばいいんだけど・・・",
私達は敵を迎撃した後、小早川との合流地点に来て彼女を待っていた。
小早川真希「おまた~! だいぶ待ってたみたいね? あんたのその顔見ればわかるわ」
波間七海「どれだけ待たせるの!? もう時間がないっていうのに、ずっと待ってたのよ」
私が強い口調で言っても小早川は全く気にしていない様子だった。
小早川真希「細かい事ぐだぐだいってると老けるわよ。それより、後ろの奴らを倒してちょうだい。」
小早川は軽く言った。
波間七海「えっ? 」
私は小早川が指差す方向を見てみた。
小早川真希「もう来てるわ」”,
"853”:”
波間七海「こんなに強い化け物を連れてきて、私たちを殺す気なの!?」
私は小早川に食って掛かった。
小早川真希「あんたを殺すつもりなら、最初から船なんて持ってくるわけないでしょう」
小早川はするっと私の事を躱すと、支流に向けて手を振った。合図に合わせて船が支流から現れた。数名の女の子が操縦しているようだ。
よくみると彼女達は最初に私達の元を離れて政府軍に下った人達だった。
ばつが悪いのか彼女達は船を止めた後、船を下りそそくさとその場を離れていった。
波間七海「あの子達は・・・いったいどういう事なの?」
小早川真希「あの子達は今、私の下についてるの。もうすぐこの街を出て、新しい生活を始めるのよ」
波間七海「小早川・・・本当に私達と一緒には来れないの?」
小早川は私の言葉を聞いてふんっと鼻で笑って、言った。
小早川真希「あんたと? 何度も言わせないで。そんな馬鹿な真似するわけないでしょ」”,
"小早川が約束を守ってくれるなんて思わなかったわ。きっと鳴海遥が大事なんでしょうね。",
94-2 転機が訪れる1
"854”:"船はもう十分だわ。みんなが乗船できるように、敵を排除して!",
波間七海「そう・・・残念。だけど助けてくれた事には本当に感謝してる・・・ありがとう」
私の言葉を聞いてむず痒そうな顔をした後、すぐに後ろを向いてしまった。
小早川真希「な、あ、あたしは下らない無駄話するために来たんじゃない。船は確かに渡した。あたしが協力できるのはここまでだ」
そういうと小早川は撤収の準備をする為その場を離れようとして数歩歩いて立ち止まった。
小早川真希「・・・あなた達もバカだね。政府に投降すればここに出て、平穏な暮らしを送れるのに、なんでこんなバカなことをするの」
波間七海「・・・自由がなければ、死より辛いわ」
小早川真希「生きているという事が大事なのよ。自由が、なんて言うのはあんたらのようなお嬢さんだけよ」
そういうと小早川は再び歩き出した。
小早川真希「・・・ま、がんばりまさい」
小早川の声がかすかに聞こえた気がした。”,
"855”:”
相沢美月「私達は先に船に乗りこみましょう。」
美月先輩はそういうと小早川達が準備してくれた船に生存者を誘導した。
小倉夏海「光ちゃん、先に行って待ってるわ」
夏海は光の手をぎゅっと握り言った。脱出できることがうれしいのか目が潤んでいるように見えた。
菊地光「分かったわ」
少女達が次々と乗船している姿をみて安堵したのか、光の表情は穏やかだった。
菊地光「これで・・・ようやく私の役目も終わる・・・」
その呟きの後に光のい長いため息が聞こえた。思わず光の顔を見ると、なんだか光がそのまま消えてしまうのではないかと不安になった。
波間七海「光、あなた・・・一緒に来るわよね?」
菊地光「え・・・? 当たり前でしょ。何言ってるのよ」
波間七海「だって・・・・・・」
(だって・・・あなたの顔、今にも胸が張り裂けそうな表情・・・ここは死んでいった人が多すぎるものね・・・)
菊地光「変なこと言ってないで、しっかり船の防衛お願いね!」
光は私の背中を軽くたたいた。
菊地光「さぁ、次はあなたよ。早く乗って!」
波間七海「わかったわ」”,
"今は少しでも時間を稼いで、全員船に乗せることが重要よ!",
94-3 転機が訪れる2
"856”:” "まだ船に乗れてない子がいるわ!通路を阻む敵を倒して!お願い!",
船着き場の近くには風間が立っていた。何だか船に乗る事を躊躇しているように見えた。
波間七海「風間さん・・・前にあなたが言ったこと」
波間七海「この街から出てももう普通の生活を送ることはできないって」
風間雅「・・・・・・」
波間七海「確かに・・・確かにそうかもしれない。でもそれは普通に生きていても同じ・・・」
波間七海「人の人生は何が起こるかわからないもの・・・だから、変わる事を恐れないで。失ったならまた築けばいい」
波間七海「怜が死んで、私も生きる事を諦めようとした・・・」
波間七海「でも、でもね。この街で一生懸命生きようとした人、犠牲になった人達を見て考え方を変えたの」
波間七海「私達がここで生きる事を諦めたらみんなの犠牲が無駄になってしまう」
風間雅「・・・・・・」
風間から返事はなかった。
私の言葉を聞いているのか聞いていないのか、風間の表情からはわからなかった。
風間雅「・・・・・・考えておく」
波間七海「・・・! え、ええ!」”,
"857”:”
他に船に乗り込んでいない女の子がいないか見渡していると撤収準備を終えた小早川が話しかけてきた。
小早川真希「ここはもう大丈夫みたいね。行くわ。あんたも早く船に乗りなさい」
小早川真希「早く行かないと置いて行かれるわよ」
小早川は冗談っぽく私に行った。
波間七海「小早川・・・本当に来ないの? 遥ちゃんを諦めるの?」
小早川真希「諦めたいわけないでしょ! でも私には選択権なんてないの」
小早川は悔しそうな表情で言った。
波間七海「どういうこと?」
小早川の台詞が気になり、私は事情を聴いてみた。
小早川真希「あいつ・・・赤城の信用を得るためにあたしには遅行性の毒薬が打ち込まれてる。一定時間以内に戻らないと私は死ぬ」
波間七海「なっ・・・!? そ、そんな!」
小早川真希「あのクズを殺せば、助かるかもって思ったけど・・・あいつらの後ろには政府と医薬研究組織という巨大な後ろ盾がある・・・あいつ一人が死んだところで計画も研究も止める事はできない」
小早川真希「あんた知ってた? 今この世界は政府と組織が作った薬が蔓延しているの。薬による支配が進んでいるのよ」
小早川真希「この事件は最初から仕組まれてた。巨大な利益の確保、研究を強制的に推し進めるために市民をコントロールしている。あいつらは何人死のうが大した代償とは思ってないわ」
小早川はちょっと肩を竦めてふんっと鼻で笑った。こんなに重い話題なのに、彼女は平然としている。”,
"海に出ても危険だってことには変わりない。でも、今の私たちにはもう他に選択肢が残されていないの!",
95-1 別れを告ぐ時間
"858”:” 小早川にもう一度私達と一緒に来ないか聞きてもらえる?",
波間七海「あなた、体は何ともないの?」
小早川の体に打ち込まれている薬の事が気になって聞いてみた。
小早川真希「心配しないで。まだ化け物になってないし、しばらくは大丈夫よ」
小早川はクルリとその場で一回転して見せた。
小早川真希「今はまだ心も体もあたしの物」
小早川はふふっと小さく笑った。
小早川真希「まさかあんたが私の心配をするなんてね。嫌われていると思ってたわ。」
波間七海「そんなことない。私はあなたにも・・・生きてほしい」
(たしかに初めは敵だったかもしれない・・・でも今は共通の目的がある仲間)
波間七海「あなたのことは絶対に忘れない・・・!」
小早川真希「ふふっ、あたしの事を覚えていてくれる人がいる、それだけで十分よ」
小早川がそっと手が差し出し、私たちは固く手を握り合った。”,
"859”:”
私が小早川と話をしていると、船から出てきた遥が私に声をかけてきた。
鳴海遥「お姉さん誰とお話して―あっ! 真希お姉ちゃん・・・」
小早川真希「遥・・・船に乗っていなきゃだめでしょ?」
鳴海遥「遥・・・あの・・・」
遥は何か言いたそうにもじもじしている。
(遥ちゃん・・・小早川と一緒に行きたいのね・・・。でも、あの子自身も小早川を説得できないことをわかってる。だから言えないの)
小早川真希「遥、じゃあね。さようなら」
小早川はそう言って立ち去ろうとした。
鳴海遥「さようなら・・・・・・」
遥は反射的に返事を返した。そして、意を決したように叫んだ。
鳴海遥「真希お姉ちゃん! 何があってもお姉ちゃんはずっとずっと私のお姉ちゃんだよ!」
離れていく小早川の背中に向かって遥は叫んだ。
小早川真希「遥・・・ありがとう」
小早川はこちらを振り向き遥に向かって笑顔で言った。
小早川真希「わかったわ! さぁ早く船に乗りなさい!」
小早川の気丈な姿に私は敬服した。遥を船に乗せると私は彼女を見送るために追いかけた。”,
"どんな地獄でも、小早川はきっと生き抜けるって信じましょう。",
95-2 守護天使
"860”:” お別れが辛いのはわかるけれど・・・そろそろ鳴海遥に船に乗っているように伝えて。",
私が小早川に追いつくと小早川は歩きながらポツリと話始めた。
小早川真希「遥はね・・・私達の学園で育てられたの。でも、元々身寄りがなかった訳じゃなかったの・・・」
波間七海「えっ・・・?」
小早川真希「当時の私には怖い物なんてなかった・・・そんな私が調子に乗って火遊びした結果、あの子の両親を死なせてしまった・・・炎の中から救えたのは遥だけだった・・・」
小早川真希「遥が学園に来た時は驚いたけど・・・それ以来、あの子の側でずっとあの子の成長を見守ってきた」
小早川真希「あの子は・・・遥は私を命の恩人だと思っているけど、私にそんな資格はない・・・私のあの子から両親を奪った殺人者なんだから」
小早川真希「私がいなければ・・・あの子は今も両親と幸せに過ごしていたはずなの」
小早川の表情は後悔と懺悔の念でいっぱいといった様子だった。
小早川真希「死んでも・・・この事だけはあの子に知られたくない・・・」
小早川真希「知られる位だったら死んだ方がずっとマシ。あの子に・・・遥に恨まれ続けて生きていくなんて私には無理だもの」
その言葉は小早川自身が遥の事を愛している事に他ならなかった。
小早川真希「もし・・・私が死んだら、私はずっとあの子のお姉ちゃんでいられる・・・」
そう呟く彼女の目には涙が浮かんでいた。”,
"861”:”
波間七海「もし遥ちゃんが真実を知ったとしても。もうあなたの事を責めたりなんてしないと思うわ」
波間七海「あなたの今までの行動ですでに罪は償われているはず。ちゃんとあなたの愛情は届いているはずよ」
(本当はどうかなんて私にはわからない・・・ただ真実を話してくれた彼女を今ここで責める気にはなれないわ・・・)
私が彼女の肩にすっと手を置くと、小早川の表情がふっと和らいだ。
小早川真希「あんた達・・・いったん本土に行くんでしょ。無事たどり着いたらすぐに燃料を補給して隣国に行ってこの事実をすべて話なさい」
小早川真希「本土に潜伏しようなんて考えない方がいい。素人のあんた達なんてすぐに見つかって捕まるだけよ」
波間七海「そんな・・・・・・あなたはどうするつもりなの?」
小早川真希「それは言えない。あんたへのアドバイスはここまでよ」”,
"今までずっと私たちは小早川を誤解してきみたい・・・でも今更分かり合えても・・・遅かったんだわ。",
95-3 約束の力
"862”:” みんな船に乗ったよね?私たちは地下の水路から抜け出しましょう。周りを警戒しててもらってもいい?",
小早川真希「見送りはここまででいいわ。早く戻りなさい!」
波間七海「あなたは・・・?」
小早川真希「政府軍に戻る。この世界は生き残ったもん勝ちよ! 私は絶対に生き残って見せる。あんたに心配されなくてもね!」
私の考えを見透かしたように、小早川は笑って言った。
波間七海「あなたの強さ、尊敬するわ」
小早川真希「全然強くなんてない。ただ・・・誰よりも生きる事に執着しているだけ・・・はっ!」
小早川が何かを察知したようなリアクションをした。
小早川真希「もうすぐ敵がくる! あいつらに私がここにいるところを見られるわけにいかない! 後は頼んだわ!」
波間七海「へっ!?」
私が状況を理解する前に、小早川はすでに姿を消していた。”,
"863”:”
ズズン・・・!
敵を倒した途端、奴らがやってきた通路の奥から大きな音が聞こえた。
波間七海「何? 崩落!?」
私が慌てていると通路の様子を見に行っていた風間が報告してくれた。
風間雅「どうやら爆弾が仕掛けらていたみたい。あいつらが死ぬのと同時に爆破する仕組みのようね」
風間雅「これで敵は追いかけて来られないけど、私達も逃げられない。水路を進んだ先に敵が待ち伏せしている可能性が高いわね・・・」
風間雅「船に行きましょう。船を守りって海まで出ないとまだまだ安心はできないわ」
波間七海「深見をみなかった? ここにはいないようだけど」
風間雅「深見君なら心配いらないわ。きっと後で追いついてくると思う」
波間七海「・・・そうね。深見の方が私達よりも何倍も修羅場を潜り抜けている」
波間七海「小早川も行ったみたいね。さすが小早川、登場も退場も派手なんだから」
波間七海「もう・・・彼女には会えないかもしれないわね・・・」
そう思うと、ふいに寂しさ感じた。”,
"私が生きている限り、なんとしても鳴海遥を守るわ。これが私なりの小早川への感謝の伝え方だから。",
96-1 河口の戦
"864”:” 岸辺に巡回している軍隊がいるわ。これじゃ出れないから奴らを退けてきて。",
私達は地下通路内の水路を河口にむけて進んでいた。
菊地光「あと少しで河口に着くわ。河口から海にでればこの街から脱出できるはず」
波間七海「さっきの爆発の件を考えると、政府軍は必ずどこかで待ち伏せをしているはずだわ」
私は武器を持ち周囲を見渡しながら答えた。
菊地光「最後まで気は抜けないわね・・・」
波間七海「戦闘態勢は整ってる。いつ襲われてもすぐに対応して見せる。」”,
"865”:”
波間七海「・・・厄介ね。軍は私たちを脱出させまいと全力で攻撃してきてるみたい」
菊地光「河口に着いたわ。きっとまた多くの敵が襲ってくる。ここまで来てやられるわけにいかないわ! 死ぬ気で戦うわよ!」
波間七海「えぇ・・・もちろん!」
光の激に私は大きく頷いた。
深見翔央「大丈夫か!?」
離れたところから声が聞こえてきた。
深見翔央「軍はまだまだ戦力を残している。俺も協力しよう」
深見は水路脇の通路から船までジャンプし飛び乗ってきた。
(10メートル以上離れているのに軽々飛び越えるなんて・・・どんどん人間らしさが失われている・・・)
波間七海「助かるわ!」
(それでも・・・彼がいると、安心する。)
深見翔央「礼はいい。君達を手伝うのはこれが最後だ。この戦いが終わったら俺はここを出る」
波間七海「え!? どこへ行くの?」
一緒にこの街を脱出するものだと思っていた私は深見の言葉に驚いた。
深見翔央「・・・・・・」
深見は答えてくれなかったが、彼の目から異様なまでの決意が垣間見えた。”,
"この先も多分待ち伏せされていると思う・・・私たち本当にここから脱出できるのかしら?",
96-2 死にゆく人
"866”:” 深見がとても苦しそうなの。彼の様子を見に行ってあげて。",
波間七海「・・・・・・深見? 何をしているの?」
戦いの最中、深見が自身の腕に注射を打っているのが見えた。
深見翔央「残りわずかか・・・・・・」
深見は小さい声で呟いた。
波間七海「深見、調子が悪いの?」
深見翔央「・・・テクノロジーセンターから盗んだ薬は使い切った。街中を探してみたが、どこにも薬も材料も残っていなかった・・・」
(深見が姿を見せなかったのは薬を探していたからなのね・・・)
波間七海「ここを脱出したら、医療設備の整った場所に行きましょう!」
深見翔央「俺の体には・・・もうそこまでの時間は残っていない」
深見は薬のアンプル3本取り出し、私に見せた。
深見翔央「これを使い切ったら、俺は自ら命を絶つ」”,
"867”:”
深見翔央「うぐっ・・・!」
残りの敵を倒した後、深見は地に膝をついた。
波間七海「だ、大丈夫!?」
深見翔央「もう・・・時間がないんだ。赤城から薬を奪わないと、自分をコントロールできなくなる」
波間七海「また以前のようになってしまうの!?」
私は深見が変異した姿を思い出していた。
深見は黙ったまま頷いた。
(また深見があんな化け物になってしまったら・・・今度こそみんなやられてしまうかもしれない・・・)
菊地光「・・・・・・」
私達の会話をずっと後ろで聞いてた光は、何かを考える素振りを見せている。
(今まで光なら・・・すぐにでも深見を追い出してしまう・・・)
波間七海「光・・・・・・」
菊地光「分かっているわ。彼にはもう何度も助けられてる・・・彼を連れて行きましょう!」”,
"深見の体はそろそろ限界に近いんじゃないかしら・・・。",
96-3 死へ向かう道
"868”:” 大変!深見が姿を消しわ!この辺りは政府軍がまだいっぱい居る・・・彼が無事だといいけれど・・・",
風間雅「深見がいなくなったわ!」
風間雅「さっきまで隅で休んでいたのに、いつの間にかいなくなってたの」
波間七海「お願い! 船を止めて、彼を探してくる!」
風間雅「でも、もうこれ以上時間をかける事はできないわ!」
風間が言うことはもっともだ、こうしている間にも政府軍は攻撃を仕掛けてくるに違いなかった。
波間七海「お願い、船を止めて! 少しでいいの、彼をすぐに連れて戻るから!」
私はみんなに深々と頭を下げて懇願した。
風間雅「で、でも・・・・・・」
菊地光「・・・一隻だけ、一隻だけ待たせるわ。 探しに行くかどうかは自分で決めなさい」
光は後ろを向いて言った。
私は頭を上げた。光の私への信頼が伝わってきた。
波間七海「ありがとう! すぐに連れ戻してくる!」
私は急いで船を下り、深見を探しにいった。
菊地光「・・・大丈夫、きっと彼を連れ戻してくれる・・・私は信じているから」”,
"869”:”
周りを見渡しても、どこにも深見の姿は見えなかった。敵でさえ周囲には見当たらなかった。
波間七海「どこへ行ったんだろう。あんな状態じゃ、遠くまではいけないはず・・・」
波間七海「しかたない、このあたりを探すか・・・」
真下里美「待ってください」
波間七海「里美!? な、.なんでここにいるの?」
真下里美「渚輪区は残り5時間48分37秒後に消滅します。 速やかに退避することを推奨します」
波間七海「そんな! 時間がさらに前倒してる。政府軍はすでに撤退したの・・・? あなた軍の・・・」
真下里美「その質問に対する回答を許可します。 私は所属は赤城財団所属のアンドロイドです」
波間七海「あ、赤城の!? ど、どういうこと・・・」
真下里美「速やかに本エリアからの脱出を推奨します」
波間七海「ダメ・・・まだやらないといけないことがある・・・!」
真下里美「渚輪区は残り5時間42分15秒後に消滅します。 速やかに退避することを推奨します」
里美はまったく同じ口調、同じテンポで同じセリフを繰り返した。
波間七海「くどい! 私は彼を、深見を見つけて、一緒にこの街を出る!」”,
"深見の力なら、敵に屈することはないと思う。でも体の事は・・・心配してもどうにもできないわ。",
97-1 提高警覺
菊地光 河口にいたら、敵の恰好の的よ、十分に気を付けてね。
赤城優斗:「抓到了吧!看你往哪逃。」
深見翔央:「哼。」
赤城優斗:「沒有加山怜,抓到你也是一樣,可以逃亡在外多年,不需要依頼赤城財團的藥物,獨自存活到現在,真是了不起。」
赤城優斗:「這麼珍貴的實驗品,怎麼能讓你逃走。」
赤城優斗:「來人,活捉他。」
軍人:「是。」
波間七海:(糟糕,深見被赤城圍住了,這麼多人,幫得了他嗎?)
波間七海:(不管了,先上再說。)
波間七海:「好不容易從敵人的包圍中脫身,想要尋找深見翔央時,卻看不到他的蹤影。」
波間七海:「就連赤城優斗也消失無蹤。」
風間雅:「深見翔央被抓走了。」風間雅指著與出海口的反方向。
風間雅:「妳要追嗎?」
波間七海:(如果現在追上去的話,可能會來不及回到船上吧?)
波間七海:(但我能就此放棄深見,跟大家一起離開這個城市嗎?)
波間七海:(該怎麼辦?)
風間雅:「深見早就有必死的決心,妳就算丟下他,他也不會怪妳。」
風間雅:「而且,他畢竟是這場災難的始作俑者,他應該也是懷抱著贖罪的心情。」
波間七海:「儘管如此,我們就如此見死不救?他是我們的夥伴!」
波間七海:(直到我喊出這句話,我才發現,這一路走來,我早就已經把深見當作夥伴看待。)
波間七海:(他是夥伴,一個都不能少的夥伴。)
菊地光 赤城にとって、深見はきっと最高の実験体・・・彼が危ないわ!
97-2 夥伴的意義
菊地光 深見翔央を助けたい?あなたが本当にしたいことだから、あなたが決めないと。
真下里美:「你們還沒走嗎?」
波間七海:「里美,妳知道赤城優斗他們往哪裡去?」
真下里美:「無可奉告。」
波間七海:「都已經是最後關頭了,請妳告訴我們,深見翔央的下落。」
真下里美:「……」
波間七海:(沒希望了,真下里美永遠只會說出必要而有限的資訊。)
真下里美:「深見翔央在東南方,還沒走遠。」出乎意料的,真下里美不疾不徐地說了出口,並且指向東南方。
波間七海:「謝謝妳,謝謝。」我由衷地說道。
真下里美:「還剩下六個小時,請妳們盡速離開這個都市。」
真下里美:「很榮幸爲妳們服務,再見了。」
波間七海:真下里美沒有半點表情,但我可以感受到她的心意。
真下里美:「這是最後一次見面了吧,再見了。」
風間雅:「這裡實在太危險了,我們回船上去吧,大家都在等我們。」
波間七海:「不,我下定決心了,深見翔央是我們的夥伴,不管他過去做過什麼,他現在已經是我們的夥伴。」
波間七海:「如果連夥伴的生命都可以放棄的話,我們直到現在的抵抗還有什麼意義?」
波間七海:「深見曽經一次次的救過我們,光就這一點,就值得我們在他最需要幫助的時候幫他一把。」
波間七海:「他不會想要被抓回去當實驗品的。就像怜一樣……」
波間七海:我抿了一下嘴唇,想起寧可自殺也不肯跟赤城優斗難開的好友。
風間雅:「他不是加山怜,他夠強,他不需要妳的保護。」
波間七海:「如果他想要犧牲自己,必須是在他自願的情況下,而不是這種情形。」
波間七海:「我要去救他,誰都不要阻攔我。」
風間雅:「以前在學校,我就是受不了妳這種固執的個性。」風間雅嘆氣。
波間七海:我知道她是為我好,但這次我不能聽她的。
波間七海:我邁開歩伐往前走,聽到風間雅默默跟在我身後的腳步聲,幾乎忍不住想要落淚。
菊地光 消滅までの時間が前倒されていたなんて。もう戸惑っている時間もないわ。
97-3 末日天使
菊地光 加山怜を失った赤城は深見を簡単に諦めることはないと思う。どうか気をつけて。
波間七海:「赤城!」
赤城優斗:「你們……是來送死的嗎?」似乎因為有大批兵力在身邊,赤城有恃無恐的微笑,揮手讓我們接近。
波間七海:「深見在哪裡?」
菊地光:「把深見翔央交出來!」不知道何時,小光出現在自己的身後。
赤城優斗:「喔……妳想通了,想回到我們身邊?隨時歡迎。」
波間七海:(咦,赤城認識小光?小光大部分時間藏身在遊樂園中指揮調度,赤城應該沒見過她。)
菊地光:「又見面了,但這絕對是最後一次。」
赤城優斗:「話別說得這麼滿,這裡已經被我們重兵包圍。」
赤城優斗:「妳們能夠坐船難開,是我默許的,換句話說,想把妳們一網打盡,也只要我一句話。」
菊地光:「……」
菊地光:「我不會跟你們走,現在,把深見翔央交出來,否則我就跟你同歸於盡。」
波間七海:這是我所不認識的菊地光,她打開從不離身的書包,裡面有一顆足以把所有人送上天堂的炸彈。
赤城優斗:「這個是?」
菊地光:「這是當初我從科技中心偷出來的武器,它的威力你一定最清楚。」
菊地光:「你們連移動腳步都來不及,就會全體跟我一起陪葬。」
波間七海:赤城臉色變了一變,顯示菊地光所言非虚。
赤城優斗:「好吧,深見翔央還給你們。」赤城冷笑道。
赤城優斗:「但是,他己經不是你們所認得的模樣。」
波間七海:「深見!」
波間七海:被打敗的深見種種倒在地上,身體不停抽播。
菊地光:「把解藥拿來。」菊地光說道,她將炸彈抱至胸前,恐嚇的意圖明確。
赤城優斗:赤城二話不說的將一根針管丟過來。
波間七海:儘管懷疑有詐,但現在已經不是遲疑的時候。我迅速地替深見施打,不一會,深見安靜下來,身軀也漸漸恢復成原來的模様。
菊地光:「現在,請你們退出這個區域。」
赤城優斗:「你們就算能坐船離開,也逃不了多久。」
菊地光:「這是我們的事情,與你無關。」
赤城優斗:「好。我們退開,但只有目前。」
赤城優斗:「等我調派人力回來,你們就會被我一網打盡。」
菊地光 赤城優斗から逃れることができないのなら・・・彼と一緒に私は死ぬわ!
98-1 最後的掙扎
菊地光 赤城が撤退した今がチャンスよ!早く船に戻りましょ。
深見翔央:「我……你們……」
波間七海:深見剛醒來,神智有些模糊不清,呆呆望著我們。
深見翔央:「你們不是已經離開了?」
波間七海:「我……我們是回來找你的,一起走吧!」
深見翔央:「我的身體早就不行了,離開這裡也沒有任何意義。」
波間七海:「你的身體還能撐多久?」
深見翔央:「一年?兩年?我也不知道,最多活不過三年,我不想再過著一天拖過一天,等待著死亡的生活。」
波間七海:「你以爲只有你在面對死亡嗎?我們的生活毎天都是戰爭,一天兩天,連三天我們都無法確定能安穩度過。」
深見翔央:「……」
菊地光:「等等再說,追兵要來了。」
菊地光:「我叫夏海她們先把船藏起來,我去呼叫她們。」
菊地光:「你們在這裡支撐一下,別走遠。」
波間七海:菊地光離開後,只剩下我跟深見兩人,尷尬的氣氛持續著,沒有人想先開口。
波間七海:「剛剛……小光好像認識赤城,你知道這件事嗎?」
深見翔央:「我不清楚,但赤城財團曾經收養一批孤兒,作爲他們活體實驗之用,被囚禁在集團內部,完全沒有自由。」
深見翔央:「直到這些少女的數量越來越少,又擔心外界開始懐疑,才開始進行複製人計畫。」
深見翔央:「如果菊地光是其中的一份子,那她一定比任何人都要痛恨赤城優斗,以及他背後的財團。」
深見翔央:「但這些都只是我的猜測而已,我是地位更低下的複製人,孤兒們起碼過的是人的生活,而我只是一個被囚禁的物品。」
深見翔央:「我不是人,我只是一件物品而已。」
深見翔央:「死亡對我來說,是一種解脫。」
波間七海:「這世界上沒有任何一件事情譲你想活下來?例如說愛你的人?或你愛的人。」
深見翔央:「愛……」
波間七海:深見翔央靜靜的看著我,像我說了什麼傻話一般。
深見翔央:「我沒有這種情感。」
菊地光 これが最後の船よ。乗らないともう逃げることはできないわ。
98-2 生死邊緣
菊地光 もうすぐ爆撃が始まってしまう!早く離れないと、深見翔央と共々死んでしまうわ!
菊地光:「船到了,上船吧,有部分的人已經先出發,我們得加緊腳步追上。」
深見翔央:「赤城一定不會放過你們,出海之後,要更加小心謹慎。保重。」
波間七海:「你呢?」
深見翔央:「我留在這裡斷後,你們走吧!」
深見翔央:「赤城快追來了。」深見指著不遠處,上千人的部隊包括最精良的武器,正浩浩蕩蕩地朝這個方向前來。
深見翔央:「這個島剰下的兵力已經不多,赤城是下定決心要抓你們了。」
深見翔央:「我去阻擋一陣,你們快走。」
波間七海:「不,我也去。」怕深見翔央阻止,我搶在他之前去迎敵。
波間七海:就算再多爭取一點時間也好,我都要用最後的力量說服他離開。
波間七海:「敵人超乎想像的多,我們退。」打倒身邊的敵人後,我往碼頭上跑,深見跟在我身後。
菊地光:「快點上船來。」站在遙遠的船上,菊地光對我大聲喊道。
深見翔央:「妳去吧!」深見對我點頭。
波間七海:「保重。」事到如今,我也知道挽回不了深見的心意。
深見翔央:「嗯。」
波間七海:深見點了點頭,向我伸出手來。
深見翔央:「很榮幸跟你們走過這一段旅程,再會了,夥伴。我永遠也不會忘記你們。」
波間七海:「我也是。」我伸出手與他交握。
波間七海:在與深見翔央告別的同時,我們都忽略了身後飛快接近的人影,等我察覺時,一把刀已經架在我的脖子上。
赤城優斗:「抓不到深見翔央或菊地光,就抓妳來彌補我的損失。」赤城在我耳邊冷冷的說。
波間七海:感覺後腦被重重的敲擊了一下,我倒在地上,一時間暈眩得無法呼吸。
赤城優斗:「我先打倒深見翔央,再來料理妳。」赤城優斗踢了我一腳,一揮手,大批的軍人湧上,將我們團團包圍。
波間七海:深見翔央沒有任何慌亂的表情,他看了看四周,露出一抹冷酷的笑意。
深見翔央:「本來我不想這様対你,但現在,我無法原諒傷害我夥伴的人。」
波間七海:勉強睁開雙眼,我看見深見拿出了一個形狀怪異的膠囊,扔向赤城優斗,接著是一連串的炸彈攻擊,周遭的士兵一一倒下。
深見翔央:「不要呼吸。」深見翔央撲過來,抱著我往旁邊翻滾。
波間七海:「那是?」我忍住呼吸,深見翔央遞上面罩給我。
深見翔央:「麻醉煙霧,他們起碼會昏睡半天以上,來不來得及逃出這座都市,就看他們自己的運氣了。」深見翔央冷冷說道。
菊地光 赤城窮追不捨,到底該怎麽辦才好?
93-3 末日來臨
菊地光 赤城優斗を倒して、早く脱出しましょう!
波間七海:一片煙霧當中,赤城帶來的士兵昏倒在地,深見扔出的膠囊,直接打中赤城的肩膀。
赤城優斗:「這是什麼?」赤城優斗低下頭研究,忽然臉色一變。
波間七海:膠囊像溶進他體內一般,迅速地融化在他肩膀上,消失無蹤。
深見翔央:「就是你們一直在研究的生化武器。」深見冷冷地說。
赤城優斗:「你竟然……你竟然連這種武器也偷走……」
波間七海:赤城露出驚慌的表情,來不及說完話,他的聲音就被一陣嘶吼代替。
赤城優斗:不一會時間,赤城的皮膚融化,露出狰獰可怕的肌肉紋理,四肢膨脹扭曲,那恐怖的模樣,超越至今所看過的任何怪物。
波間七海:「他?赤城他???」
深見翔央:「以牙還牙,以眼還眼,我也讓他嘗到變成怪物的滋味。」
波間七海:「我們快逃,他要發動攻擊了。」
波間七海:「赤城就這樣死了?」
波間七海:我一時不敢相信,我們打倒了這個始作俑者?
深見翔央:「沒時間替他哀悼了,跟我來。」
波間七海:深見拉著我往前跑,他的手很溫暖,就算是複製人,他還是一個有血有肉的人。
深見翔央:「跳!」
波間七海:聽到深見的命令,我毫不猶豫的跳起來,往離岸還有一段距離的船跳過去,但距離不夠。
風間雅:「握住我的手。」風間衝了出來,對我伸出手。
相澤美月:「抓住縄子!」美月姐丟出縄子。
小倉夏海:「加油!」
波間七海:握住風間的手,被她用力一拉,我順利跳上了船,看著等在這裡的大家,我心懐感激。
波間七海:「謝謝你們還在這裡等著我。」
菊地光:「沒有妳,大家都不願意離開,一定要等到妳才願意走。」
風間雅:「不是對我說要尋找新的幸福嗎?」
波間七海:「謝謝你們,我回來了。」看著大家的臉,我有一種回到家的幸福。
波間七海:船快速的往外海移動,想起深見翔央,回頭望去,他默默的站在碼頭上,舉起一隻手,像是對我們致意。
波間七海:雖然看不清楚他的臉,但他的表情一定是一貫的冷漠吧!
波間七海:誰也不知道,他冷漠的臉龐底下,卻是一顆真誠的心。
波間七海:他沒有親人,沒有朋友,他只有自己一個人,為了短暫的人生奮鬥。
波間七海:隨著這座城市消失,希望他終於能找回一絲平靜。
菊地光:「走吧。」菊地光似乎看穿了我的心思,她拍了拍我的肩膀,要我看向前方,新生活正在等著我們。
波間七海:今後的我們,要埋葬所有過去,為了未來而活。
深見翔央:「終於結束了,不管未來妳們會碰到什麼,我都衷心的祝福妳們。」
深見翔央:「最後,我還是孤獨的一個人,一個人活著,也一個人死去。」
深見翔央:「沒有任何人會記得我曽經出現在這個世界上,真是毫無意義的人生。」
加山怜:「不是唷,絕對不是的。還有我在這裡。」
加山怜:「縦使整個世界面臨毀滅,你也絕對不是孤單的,因爲你曽經奮鬥過,這些都會對你的人生充滿意義。」
深見翔央:「……」
深見翔央:「為什麼妳會在這裡?妳不是死了?而且就死在我們面前。」
加山怜:「我也不知道發生什麼,最簡單的解釋是,因為我死了,所以,我才能繼續活下去。」
深見翔央:「妳現在……」
加山怜:「我既不是活人,也不是死人,我的身體還能活動,但我的心臟,已經不再跳動。」
加山怜:「你跟我都不是一般定義中的人,如果要死,我就在這裡陪你一起死。」
加山怜:「……」
加山怜:「我已經不能回到夥伴身邊去拖累她們了,光是這一點,就讓我孤單的想死。」
加山怜:「但,與其死,爲什麼不去找尋其他的可能性?也許,就連我們,都還有得到幸福的可能。」
加山怜:「比一般人都要強壯的我們,更可以在這樣的世界裡生存下來。」
深見翔央:「妳真是堅強,在這些年逃亡的生活中,我早就失去掙扎的勇氣。」
加山怜:「我認爲,你應該繼續研究解藥,幫助自己,也幫助更多被病毒危害的人。」
加山怜:「這個城市之外,已經有其他地方爆發病毒了,這個世界會需要更多伸出援手,對抗赤城財團的人。」
深見翔央:「妳的話很有說服力,有妳在身邊,也許我的解藥研究可以再往前邁進!」
加山怜:「走,我們一起離開這座都市。」
深見翔央:「妳有離開的方法?」
加山怜:「我被赤城抓去,可不是乖乖做個俘虜而己。」加山怜眨了眨眼睛。
深見翔央:「真令人驚奇,妳不是外表那樣柔弱而已,走吧,離開這座城市,去創造我們自己的未來。」
菊地光 まさか本土まで・・・。これから新しい戦いが始まるわ。